船を編む最終回 作者が辞書作りを題材にした理由【ネタバレ有り】
僕のブログ過去に紹介したことがある、「船を編む」のアニメがついに最終回を迎えました。
地味な感じがする「辞書制作」を題材とした作品だったのですが、そこには思った以上に深いメッセージが込められていました。
毎週この作品を見続けて、最終回を見たときに作者がなぜ「辞書制作」を題材としたのか、その意味がわかった気がします。
今回はそんな「船を編む」を通して僕が感じた作者の思いを話していきます。
気が付くと作品に惹きつけられていました
主人公:馬締は本大好き!
最初は本当に「辞書作り」という題材が地味に感じていて、主人公の名前も
「馬締」で「マジメ」て
ってツッコミを入れちゃいたいぐらいでした。
しかも、恐ろしいぐらい地味な主人公でこの作品大丈夫だろうかと心配したぐらいでした。
ですが、物語が進むにつれて地味なところなんて気にならなくなるぐらい話に惹きつけられて
まず序盤の主人公から醸し出される本への愛です。
馬締は少し古目の寮みたいなところに住んでいて、アニメ内でも度々馬締の部屋が出てくるのですが、室内がちょっとした図書館みたいになっています。
どんだけ主人公、本のこと大好きなんだよ
って思ってしまうぐらいすごい部屋で、ここで布団を敷いて寝ている主人公に驚かされます。
しかもこの部屋の本棚にはちゃんと辞書も置いてあり、それを読んだ経験が後々生かされています。
馬締の影響で変わっていく西岡
馬締の先輩である西岡は最初馬締のやつを「鈍臭いヤツ」ぐらいにしか思っていません。
しかし、馬締の真っ直ぐなところや辞書作りへの真剣差にどんどん惹かれて変化していきます。
神谷さんが声をあてているのですが、初めの方はチャラいやる気のない先輩感がすごかったです。
辞書制作に関心がなかった西岡ですが、馬締が加入し楽しくなってきたところで辞書編集部が無くなるかもしれないという危機が出てきます。
そこで、西岡は持ち前の社交性を活かし、有名な作家さんに原稿の一部を寄稿としてもらう等でどうにか辞書編集部の解体は免れたものの、自身は春から宣伝部への移動を言い渡されてしまいます。
更に寄稿してもらった作家さんの原稿を修正し、修正の件をその作家に伝えると呼び出され、遠まわしに土下座までさせられそうになります。
しかし、西岡はこれまでの辞書編集の苦労を思い出し、ぐっと堪えてキレッキレッの返しをします。
このシーンで僕は西岡の変化をすごい感じたことと、広報部に行っちゃうのがものすごい勿体無いとおもいました。
不器用だと実直な馬締とちゃらいけど社交性が高く柔軟性のある西岡のコンビはベストなんじゃないかと思いました。
馬締らしさが感じられる香具矢との恋模様
西岡とのコンビは作品の特徴としてありますが、ヒロイン香具矢との恋模様もこの作品の特徴の一つです。
思わず笑ってしまったのが数ページに渡って書かれた馬締の香具矢への恋文でした。
「チェックとして欲しい」と渡された西岡もページの多さに驚いていました。
そんな恋文チェックを任された西岡は、広報部に飛ばされること聞かされショックを受けてしまい、息抜きに公園で馬締の恋文を読み始めます。
始めは「長い」「言葉が難しい」とぼやいていた西岡ですが、読み終わると「あいつらしい」と何か吹っ切れているようでした。
帰り際には「言葉とか難しいところがあったけど、お前らしくてよかったよ」と恋文を返してあげるシーンには西岡の心の変化が感じられました。
そして、香具矢へ恋文を渡すシーンですが、まさかの「読んでください」でなんの手紙かも言わずに渡してしまいます。
いや、さすがになんの手紙かぐらい言わないと
案の定恋文って伝わってなかったようですが、最終的にはお互い好きだということで付き合うことになっていました。
なんかここら辺の地味な感じの恋愛も馬締らしさが出ていて作品の感じがものすごい伝わりました。
8話から急に13年後へと話が飛びます
ここまで舟を編むの魅力について長々と語ってきましたが、このアニメ8話で急に13年後に話が飛びます。
馬締老けたな~って思ったら、10年以上空いてるのね
って無駄に納得してしまいました。
そして13年後ということで新キャラが二人出てきます。
女性ファッション誌から配属されてきた岸部みどりちゃんと製紙会社の営業マン宮本慎一郎くんです。
岸部ちゃんは最初ファッション誌から辞書編集に配属されたことに少し不満がありましたが、馬締や西岡に触れて心情が変化していきます。
西岡が馬締の恋文をコピーした挙句に書庫の本の間に挟んでいたのは笑いました。
それをわざわざ岸部ちゃんに探し当てさせて、「その手紙が馬締という男を表してるよ」と言っていたのはなんか納得してしまいました。
ちなみに慎一郎くんは辞書用の紙のことで辞書編集部に何度も足を運ぶのですが、岸部ちゃんといい感じになりそうなシーンがあります。
二人がその後どうなったかは描かれていませんが、いい方向にいったんじゃないかと勝手にお思っています。
13年経っているので既存のキャラ達もある程度の変化が見られました。
主人公である馬締は香具矢と結婚しており、役職も主任になっています。
西岡は広報部で副部長になっており、13年前の時に同棲していたセフレと結婚して二児の父親になっています。
香具矢は馬締と結婚後料亭を持っており、祖母のタケの死後、馬締が住んでいる寮を受け継いでいます。
岸部ちゃんが辞書編集部に来たとき、歓迎会を香具矢の料亭でやっているシーンがあります。
歓迎会後岸部ちゃんが西岡に「自分は辞書編集に向いてないんじゃ」と相談するのに対して、西岡は「じゃあ右を説明してみて」と言い出します。
これに対して岸部ちゃんは「体を北に向けた時の東に当たる方」と言い出し、西岡は「君は辞書編集に向いてるよ」と返します。
このシーン僕も西岡と全く同じ気持ちで、
岸部ちゃん辞書編集向いてるし、君馬締に似てるよ。
って思いました。
言葉って不思議だなと感じさせられるシーンでした。
10話でついに最大の難関が!
第9話の最後で「血潮」が大渡海に入っていないことが発覚しました。
これによって他にも抜けている言葉があるのではないかということになり、収録予定である24万語を全てを見直すことになります。
結果的に人員を雇数日間かけてチェックすることになります。
数日間チェックの仕事をして、みんな表情が変化していくのがなんかよかったです。
最後は馬締のところにまで寄ってきて「また何かあったら呼んでください」って言ってるところはホッコリしました。
採集カードで収録する言葉を集めたり、24万語を見直したりと、辞書編集は地味ですが大変な仕事なんだってことを感じさせられるシーンでした。
この24万語を見直している途中で、全員を一旦家に返して馬締自身も自宅に帰るシーンがあります。
帰宅して伸びたヒゲ剃って風呂入ったあとの馬締見ると、なんだか若返ったように見えました。
あとエンディング後のCパートで馬締・香具矢・タカの三人で写真を撮影しているシーンがあり、思わず見入ってしまいました。
ちなみに多分ですがこの写真の笑っているタカの部分を切り取って遺影にしているみたいでした。
最終回、作者が本当に伝えたかったのはここじゃないかな?
そして最終回、24万語の再確認を乗り越えついに大渡海が製本間近となってきました。
ちなみに10話の途中で松本先生は体調を崩して一時入院しています。
製本間近となり馬締と荒木で松本先生の元にお見舞いにいきます。
見舞いに来た二人に松本先生は食堂に癌が見つかったことを伝えます。
それと同時に辞書について松本先生が考えていること・思っていることを二人に伝えます。
権威付けと支配の道具として言葉が位置付けられてはいけません
言葉は…言葉を紡ぐ人の心は自由であるべきです
僕はこの舟を編むを書いた原作者三浦しをんさんが伝えたかったのはこの言葉だったんじゃないかと思います。
だから、わざわざ「辞書編集」を題材にしたんじゃないのかと思います。
松本先生はこのあと、大渡海の完成を待たずして死んでしまいます。
間に合わなかった…
と悔し涙を流す馬締にはなんとも言えない気持ちになりました。
そっと手を握る香具矢にいい奥さんを感じました。
最後は辞書編集部宛に書いた松本先生の手紙を馬締が呼んで物語は終わっていきました。
僕自身、今はブログで言葉を使い色々な思いを書いたり、作品を紹介したりしています。
言葉が権威付けと支配の道具になってしまうような世の中になってしまってはいけないと思います。
言葉として物事の良さを伝える人間として精進していきたいです。